第六十回。比重 体積 重量計算 キロ単価 フィルム代はこれで算出する。

第六十回。比重 体積 重量計算 キロ単価 フィルム代はこれで算出する。
’ 試作用のフィルムを購入したいのですが、代金の出し方を教えてもらえませんか? ’

これはある成形型屋さんから聞かれたことです。
フィルム(=プラスチック材料)を使用するのは成形現場だけではありません。
特に試作時ですが、型の上がり具合を確認するために型屋さんも購入することがあります。
彼は独立したばかりで、そのあたりの費用感がまだつかめていなかったのでしょうね。

フィルム代は、使う大きさ(体積)と比重から重量を出してキロ単価をかけて算出します。

今回はその計算のしかたを以下の流れでお話していきます。

・計算の法則(ロール材料)
・平板の計算のしかたも確認する

難しいことを考えずに数字を当てはめていけば費用が出ます。
計算法則を覚えて、時間をかけずにフィルム代を出してしまってください。

計算の法則

以下の購入内容で具体的に計算してみます。
材料名:A-PET樹脂(比重1.34)
幅・厚:640㍉幅×厚み0.5㍉
購入量:150M/巻を1本(ロール材)
購入単価:@250/kg

64×15000×0.05×1.34×@250÷1000=16,080円(税抜)

材料幅(ヨコ)×材料長(タテ)×材料厚×比重×キロ単価÷単位調整

「重さを出して単価をかける」
これがフィルム代を算出する計算方法です。
この流れを順にご説明します。

購入するフィルムの重さを計算する。

計算は「重さを出すこと」がメインになります。
重さに関わる四つのことをお話しながら、最終的に「A-PET0.5㍉厚1本150M」の重さを出してみます。

その1. 比重とはなにか
その2. 比重と大きさと重さの関係
その3. 体積の出し方(単位の調整)
その4. 重さを出す(単位の調整)

前述の計算式の前半、赤文字の部分が重量を出すための計算となっています。
フィルム代を算出するには購入するフィルムの重さをまず出すことが必須です。
なぜならば、材料商社からの提示がおおよそキロ単価で示されるからです。

重さは大きさ(体積)と比重で算出しますので、まずこのふたつの関係を説明します。

その1. 比重とは

まず比重とはなにかを簡単にお話します。
比重とは基準物質=水(1気圧・4℃)と比べて、どのくらい軽いか重いかを示す量です。
つまり水を「1」としたときに、対象の物質が1よりどのくらい軽いのか重いのかということを示します。

例えば1より重いプラスチックで言えば、A-PET=1.34、塩ビ=1.4、PS(スチロール)=1.06、ABS=1.07で考えられています。
軽いものでは、PP(ポリプロピレン)=0.9あたりでしょうか。

その2. 比重と重さの関係

比重の説明で取り上げた基準物質「水」。
水の重さは、1㎤=1gです。
つまり、縦横高さが1センチの箱に入った水が1gということです。

とすれば、同じ体積(=1㎤)で水と比べてどれだけ軽いのか重いのかでその物質の1㎤の重さが分かると言うことになります。
ここで比重が使われるわけです。
例えば、比重1.34のA-PETは1㎤=1.34gということになります。

その3. 体積を出してみる

では前述の「A-PET0.5㍉厚1本150M」の大きさを計算してみます。

しかしその前にやらなくてはいけないことがあります。
それはバラバラの単位をまとめるということです。

3-1. 単位の調整をする

フィルムの大きさを示す単位はミリメートルとメートル。これを基準単位「センチメートル」に合わせる。

成形用フィルムの大きさは、μm(ミクロン=1000分の1ミリ)かミリで表示さることが多いのですが、フィルム商社が作成する規格表は縦横・厚みがミリメートル・巻はメートルが多いです。

では「A-PET 640㍉幅×厚み0.5㍉1本150M」の単位をセンチメーターに合わせます。
ちなみに640㍉幅というのは、成形ロール材で一番多く使われる規格幅です。

幅640ミリ→64センチメートル(640÷10)
巻150メートル→15000センチメートル(150×100)
厚み0.5ミリ→0.05センチメートル(0.5÷10)

これで体積を出します。
64×15000×0.05=48000㎤

この48000㎝㎡が冒頭の計算式の「64×15000×0.05」です。

その4. 重さを出します

A-PET樹脂の比重は1.34(1㎤=1.34g)なので、重さは
48000㎤×1.34g=64320g

この64320gが冒頭の計算式の「64×15000×0.05×1.34」です。

4-1. 単位の調整をもう一度する

重さの単位をグラムからキログラムに合わせる

フィルム商社からの単価提示はキロ単価でしたね。
ここでグラムをキロに直します。
64320g÷1000=64.32キログラム

この64.32キログラムが冒頭の計算式の「64×15000×0.05×1.34÷1000」です。

フィルム代の金額を出す

重さまで出ました。
あとはキロ単価を掛けるだけです。
64.32キロ×@250/KG=16,080円(税抜)

64×15000×0.05×1.34×@250÷1000=16,080円(税抜)

ロール材1本のフィルム代が出ました!
もうひと形態の平板(カット判)の費用を出してフィルム代の計算の仕方を終わりにします。

平板の計算のしかたも確認する

以下の購入内容で計算してみます。
材料名:A-PET樹脂(比重1.34)
幅・厚:1460㍉×670㍉×厚み0.5㍉
購入量:100枚(平板材)
購入単価:@400/kg

146×67×0.05×1.34×@400÷1000×100枚=26,215円(税抜)

平板の場合は、1枚の単価を出した後に購入枚数をかけて総金額を算出する。

1460ミリ×670ミリは平板の規格サイズで「セル判」と呼ばれているものです。
フィルムのキロ単価はロール材よりも平板材の方が高くなります。
平板の場合は指定サイズにカット(断裁)してもらって納めてもらう場合が多いので、カット工賃も頭に入れておいた方がよいと思います。

まとめ: 時間をかけない計算法則を覚え

今回はフィルム代を時間をかけずに算出する計算方法をご説明してきました。
内容をまとめると以下のとおりです。

フィルム代の計算の法則

購入するフィルムの重さを計算する。

その1. 比重とはなにか
その2. 比重と大きさと重さの関係
その3. 体積の出し方(単位の調整)
その4. 重さを出す(単位の調整)

重さに単価をかけて料金を算出する。

平板の計算のしかたも確認する

フィルムのもう一つの形態「平板(カット判)」の費用計算。

その1.1枚の単価を出した後に購入枚数をかけて総金額を算出する。
その2. カット(断裁)料金も頭に入れる

フィルム代(材料代)の算出は、方法を覚えてしまえば機械的に計算できます!
理屈は最初の1回だけ。
くれぐれも機械的におこなって、ちゃちゃと終わらせてしまいましょう。

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