第二回。【熱可塑性樹脂】頑固なやつは、真空成形には適さない。

第二回。【熱可塑性樹脂】頑固なやつは、真空成形には適さない。

販売や加工の分野でプラスチック素材に関わり合いを持っていない方々には、おそらく `プラスチックはプラスチック ‘ 、すべていっしょくたんに思えることでしょう。
しかし実際は、すべてのプラスチック素材は各々異なった分子構造を持っていて、すべてがまったく違う素材と言えます。
今回は、真空成形加工に適するプラスチックとはどんな性質を持っているものなのかをお話したいと思います。

プラスチックとは。

プラスチックの真空成形加工業に身を置いて約30年。
そんなわたしも、実はプラスチックとは何かと考えたことがありませんでした。
ちょうど良い機会なので調べてみました。
「初歩から学ぶプラスチック(中村次雄・佐藤功共著、工業調査会発行)」から引用させていただきます。

プラスチックという言葉が登場したのは比較的に新しく1920年(大正九年)ごろのこと、ドイツのノーベル賞学者、H・シュタウディンガー博士が合成によって高分子をつくる理論を世に発表してからです。この語源はギリシャ語の“プラスティコス″からきているといわれ、これは「形づくる」、「成長する」、「発達する」という意味の接尾語で、英語の“plastic”は「成形力のある」とか「こねて物をつくれる」などという意味の形容詞で、この語尾に“s”がつき、“plastics”という名詞になりますと「可塑(かそ)性をもつもの」という意味になります。

` 塑 ‘とは「土をこねて像をつくること」の意味ですから、可塑性とは「形のあるものをつくることができる性質」と言え、そのような性質をもった物質で、人工的につくられた高分子化合物を“プラスチック”と呼んでいます。

日本では最初のプラスチックであるフェノール樹脂の原料の外観が天然の松脂(まつやに)に似ていたことから、これを“合成樹脂”と呼び、中国ではこの材料の性質を重視して“塑料”と名付けています。

熱可塑性(ねつかそせい)とは。

前回のブログでも‘熱可塑性’という言葉が出ました。
可塑性の上に熱という文字がつきました。

上述の文献の内容から考えると、熱可塑性というのは熱を加えると形を変える性質と考えて良さそうです。
一方、同じような言葉で‘熱硬化性’というものもあります。
これも熱を加えると形を変えるところまでは同じです。
ただ、形が変わった後の変化に違いがあります

熱可塑性のものは再び熱を加えれば変化を起こし出しますが、熱硬化性のものは一度硬化してしまうと熱を加えても元には戻りません。
この性質の違いを、前述の「初歩から学ぶプラスチック」ではチョコレートとクッキーを例に上げて説明しています。

チョコレートは熱を加えると液体になり、冷やすと今度は個体になる。
そしてもう一度熱を加えると、再び液体に戻ります。
一方、クッキーは熱を加えて焼き上げると個体になります。
しかし、もう一度熱を加えても焦げるだけで液体には戻りません。
このイメージです。

加熱し柔らかくした上で1気圧という弱い力で引っぱり形を作る真空加工において、加熱をしているうちに再び戻らないほど硬化してしまう、頑固なプラスチックは空気で引っぱることができません。
つまり、真空成形加工に適しているプラスチックの一つ目の条件としては、‘熱可塑性’である言うことが上げられます。

熱可塑性樹脂は耐熱性が低い。

熱可塑性樹脂を加熱・加圧をすると形が出来ます。
再度加熱をすると完全には戻りませんが、成形前の平らな状態に戻ろうとします。
このことは逆に、熱可塑性樹脂は耐熱性が低く、熱硬化性樹脂は耐熱性が高いとも言えます。

私は、真空成形業に就いた一年目に大きな失敗をおこしました。
夏の暑い盛りの納品の時でした。
昼食後に出かけようと、昼前に製品を先に車の中に積んでおいたのです。
その結果、高い車中温で製品が変形を起こしてしまったのです。
あの時以来、暑い時期の荷積みは本当に気をつけています。

延伸フィルムとは。

プラスチックの中には結晶構造(規則正しく並んだ部分)を持つものと、そうでないものがあります。
これをイメージで例えれば、靴ひもとぬい糸。
靴ひもは、両端がほつれないように固められていますね。
この固められている部分が結晶構造。
一方、ぬい糸はクルクルの状態で結晶構造的な部分はなし。
先程のクッキーとチョコレートほど良い例えにはなりませんでしたが、いかがでしょう。(笑)
この結晶構造を持っているプラスチックを結晶性、持たないものを非晶性プラスチックと呼びます。

プラスチックは伸ばすと強くなる。

結晶性プラスチックは伸ばすことによって、この結晶構造をより密にしっかりした並びにすることができます。
縦方向だけ伸ばしたものを一軸延伸、縦横両方向に伸ばしたものを二軸延伸フィルムと呼びます。
延伸がかけられたフィルム(プラスチック)はしっかり構造になります。
そしてその結果として、無延伸のプラスチックと比べ温度変化に対して大きな変化を持たなくなくなります。
つまり、加熱し素材を柔らかくすることによって成形する真空成形には適さないものとなります。

熱可塑性であること。無延伸であること。

これらのことをあらためて確認することは、実は加工現場ではほとんどありません。
それは大前提として`成形用´材料を購入するからです。
熱可塑性か?延伸がかけられているか?などと気にするのは、見たこともない材料をテストしてほしいと依頼される時くらいです。

上には上がいて、本当に研究熱心な加工現場があります。
なので絶対とは言い切れませんが、私の経験では「熱可塑性であり、無延伸である」ということが真空成形に適するプラスチックの第一条件ではないかと思います。

真空成形品を使ってみようよ!

  • ‘これから’という元気なお客様とのお取引も大切にいたします
  • むずかしい専門用語は使いません。分かりやすい仕事をめざします
  • 真空成形品導入の際にネックになりがちな、型の製作費用の節減をめざします
  • 限られた時間の中で丁寧な仕事をめざします。お客様へ安心感のご提供を志しています