第三十回。【パッケージ解体】ビューティ・サンポ 「CAEMEX LIP BALM」+シンシア「グッピーラムネリップクリーム」日米対決!見た目も仕様もこれだけ違う
【パッケージ解体】シリーズ。初めてパッケージを製作する。どういうものを揃えて、どういう仕様にしたらよいか分からない。ならば、パッケージの先人のまねをしてみることを勧める。もちろん、まねて良いこと悪いことは存在する。しかし、先人がこのパッケージをどういう意図で設計し作製したのかを理解することはとても有意義なことだと思う。そんな気持ちをこめて始めたこの【パッケージ解体】シリーズ。
以前にも書いたが、わたしは文房具に弱い。
製品が数百ならぶ激戦の売り場。文房具メーカーの努力は半端ない。製品もそうだし、パッケージの工夫も痛いほど見て取れる。そのためか、成形品サンプルを買いに行くと結局は文房具売り場に吸い寄せられてしまう。それは他業界でも同じことなのだろうが・・・。
今回は新しい試みとして、嫁さんに同行をお願いしサンプルを選んでもらった。
彼女にお願いする際に「必要なもの、ほしいものがあればまずそのことを優先して構わない・そういうものがなければ、パッケージの気に入ったものを選んでほしい」とだけ話しておいた。結果によっては、成形品以外のパッケージ解体も考えていた。
二人で向かったのは隣接する区にあるショッピングモール。その中に東急ハンズがある。時間が早かったのか、コロナの影響なのか、ソーシャルディスタンスが十分に取れる程度の人出だった。これならば、ゆっくり店内を散策できそうだ。
選ばれた商品はふたつ。熱圧着とスライドの各ブリスターである。選んだ理由を聞けば「見た目が可愛らしい。そして、対照的」という。対照的?
(株)ビューティ・サンポ社販売「CARMEX クラッシック リップバーム」と(株)シンシア社発売「クッピーラムネ リップクリーム」。そして奇しくも、こてこての日米対決となった。ふたつを並べて持ってくるとは・・とても新鮮である。
正直、二つともパッケージには目あたらしさはない。しかし。
CARMEXリップバームのブリスター側面 。勾配がしっかりついていて生産性が良いだろう。それにしても大きな勾配。と、そう思って見ていただけだった。
これって偶然だろうか?この大きな抜き勾配ゆえに、製品のうたい文句が反射して二重に見えるのである。これが意図的に考えられたものならば、素晴らしい着想だ。
クッピーラムネ リップクリームのブリスター仕様。回転止めに立脚式。回転止めには念を入れて逆勾配も使っている。しっかり効果が出ている。
ごらん頂ければ一目瞭然。商品名がまっすぐ前を向いている。回転止め、特に逆勾配の効果が出ているのだ。まぁ、CARMEXリップバームにこれをやったら、うたい文句二重見えはなかっただろうから個人的には[「互いによし」。
二つともパッケージには目あたらしさはない。などと言ったことが、正直恥ずかしい。
クッピーラムネ リップクリームのスライドブリスターは立脚式。そのため、脚の部分にスペースができてしまう。そのスペースに製品が落ちないように折り返しで台が作られているのだ。
加えて、逃げる必要もない部分の折り返ししろが一部細くなっている。ブリスターの抜き穴に台紙のとんがりをかませるこのとめ方は、外されにくいが外しもにくい。実際に取ってみると分かるのだが、折り返ししろが細くなりかける部分に指をかけると案外、台紙が外しやすいことがわかる。
・CARMEXとは。
カーマラボラトリー社は、アメリカのウイスコンシン州にて、1937年にアルフレッド・ウォービングによって創業された歴史あるリップバームメーカーです。
創業以来、今もなお製品開発に力を注ぎ生産管理されています。アメリカ人なら、子供の頃から慣れ浸しんだブランドとして知名度が高く、全米の薬剤師組合で21年間に渡り、リップバーム部門で「ナンバー1」を獲得しています。
現在では、アメリカ以外の50ヵ国で販売され、1分間で約145個を売上げるほどの販売実績を残しています。
そして、海外セレブやメイクアップアーティストも多く愛用するほどの世界的人気ブランドとして成長し続けています。
さて、CARMEXの台紙。黄色と赤を基調にしたとてもシンプルな絵柄。いかにも米国メーカーが作っているというデザイン。表面には、日本語もほとんど見当たらない。
彼女に聞けば、いま必要なものはなく今回はパッケージの見た目だけで選ぶことにしたそうだ。そして、このデザインがとても気に入ってついこれを選んでしまったという。真空成形、パッケージへ関心のない彼女が選ぶ、妥当な理由であろう。
「CARMEX リップバーム」を選んだ後に、気になってしまったのが「クッピーラムネ リップクリーム」だったらしい。
・クッピーラムネ リップクリームとは。
レトロなイラストのパッケージもそのままに、クッピーラムネの甘ずっぱい口どけをリップクリームにしました。見た目の可愛らしさや香りだけでなく、リップとしての保湿力もあり乾燥から唇を守る「クッピーラムネリップクリーム」。自分用にはもちろん、ちょっとしたプレゼントとしてもオススメです☆
この文字にこの絵。ベタベタな昭和である。そして、わたしたちにとって思い出深いものだ。まさか、東急ハンズの、まさか化粧品売り場で再会するとは思いもしなかった。カクダイのクッピーラムネ。カクダイ製菓とライセンス契約を結んで作った企画ものらしい。
小学生の頃、遠足に持って行ってよかったお菓子は300円以内だった。あんず、きなこ飴、ふがし、ラムネ。このあたりが定番だった。この絵柄を見るといきなりあの頃に戻される。これは彼女も同じだったのではないだろうか。
中、高校とFEN(米軍極東放送)を聞きまくっていた。いつの時代だよと言われそうだが、アメリカと言う国に憧れがあったのは事実である。アメリカデザインに昭和のデザイン。あこがれに思い出。彼女がそうだったか知らない。けれど、この組み合わせには十分納得してしまった。
パッケージ解体を行うたびに思うことがある。購買意欲とは予想もしていないところにもある。製品本体の魅力、企画力はもちろん、パッケージだったり、置き場の妙だったり。そしてその時の心境だったり。この解体作業はわたしにとって学び舎かもしれない。
今回は同行してくれた嫁さんに感謝。
さてと、ラムネの味は試してみなくてはならない。とうに味は忘れてしまったが、いちど口にすればすぐに思い出すにちがいない。
残念ながら、二人の感想は同じだった。‵あのラムネの味はしない。’
この台紙にはこう書いてある「食べ物ではございません」。いつか本当に間違えてしまうような「クッピーラムネ リップクリーム」になってくれる日を楽しみにしよう。
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