第二十七回。【パッケージ解体】ダイソー「壁紙に貼れるフック」100円でもこれだけのものが作れる。
【パッケージ解体】シリーズ。初めてパッケージを製作する。どういうものを揃えて、どういう仕様にしたらよいか分からない。ならば、パッケージの先人のまねをしてみることを勧める。もちろん、まねて良いこと悪いことは存在する。しかし、先人がこのパッケージをどういう意図で設計し作製したのかを理解することはとても有意義なことだと思う。そんな気持ちをこめて始めたこの【パッケージ解体】シリーズ。
移動途中に大きなダイソーが目に入った。ここも真空成形品の宝庫。勉強して行こうとなった。
店内入口付近には、最近よく目にする携帯用の扇風機がいくつも並ぶ。300円、500円。小型と言えども、扇風機がワンコインでよくも売れるものだと感心しきり。
かれこれ30分以上は店内をぶらついた。さすがに成形品は多い。が、その程度はピンキリ。100円で売るにはそこは目をつぶるのだろうと思った矢先、きれいな成形品を見つけた。
・ダイソー「壁紙に貼れるフック」
壁に貼るフックとはなんぞや?ブリスター上部に差し込み?解体が楽しみだ。
スライドブリスターに二つ折りの台紙。フックが4ヶに接着剤が1ヶ。これが商品一式。
パッケージ形態はスライドブリスター。適度に成形され、しわなし、目立つようなエアだまりも見当たらない。3辺の折り返しに開きもない。当たり前のような成形品なのだが、その当たり前が大事だと思う。一般的な話として、極めて廉価な製品のパッケージにはそれなりのモノも多い。
ブリスターは台紙に対して7割ほどの大きさしかない。つまり、台紙全面を覆っていない。このサイズ設定は、ブリスターの単価にどれだけの影響を与えるのか。
4ヶ入りのフックは段々に重ねることによって幅方向のサイズを抑えている。同梱されている接着剤の横幅にほぼ揃えるような形になっており、見た目にもすっきりさせている。立体感も出る。
さて、先程の台紙に対するブリスターのサイズのこと。台紙に対して7割ほどの大きさでブリスターが作られている。逆を考えれば、台紙の大きさを現状の7割のサイズにしてもパッケージとしては成り立つということになる。
しかしご覧のとおり、台紙の表裏にはびっちり印刷がされている。英字で書かれている部分など読むのも疲れるほど文字が小さい。と言って、わたしの場合、文字が大きくても読めないのだが。
つまりこの商品には、台紙のこのサイズは無駄に大きいのではなくマストということだ。もしこの台紙サイズに合わせて、一般的によく使わわれる「全面を覆う」ブリスターを作った場合、どれだけ費用に影響を与えただろうか。
市販のPET材の標準幅サイズが640㍉。成形型をセットするベースの標準幅サイズが600㍉。これを基準に型の取り数を考えてみた。青線が実際の、緑線が台紙を全面覆った場合の大きさ。
ほぼ同じ面積の中に、青が16型・緑が12型がつく。単純に考えれば、緑は青に対して材料代、成形・抜き工賃がおおよそ16/12かかるということになる。あくまでも型の取り数からの観点で単価イコールではないが、少なくとも費用がよりかかったのは間違いない。
加えて緑の場合、ひっかけ穴を取るという負担がついてくる。実はこれは大きい。
一方、青の場合、型数が増えるその分、初期費用は高くなると考えなければならないが、ダイソー規模の、それも‵売れています’と表示してある商品ならば生産ロットは少なくはないはず。それならば、初期費用を上げても生産単価を下げた方が得になると思われる。
実はパッケージを解体してみて一番関心した部分は、この差し込み。初めは何とも思わなかった。それが一度バラしてもう一度セットをし直してみると、この差し込みの大きな役割を実感できた。
台紙の切れ込み形状も良いのか、ブリスターのこの部分を差し込むとブリスターの上端と台紙の間の隙間が驚くほどなくなる。この一部分の差し込みで内にゴミやほこりが入りづらくなると思う。
この差し込みがこんな効果を生むのか?解体のたび思うが、パッケージの世界は本当に奥が深い。
ネットでググると、この商品に対するインプレ記事がずらっと出て来る。どうやら評判が良い商品らしい。台紙には特許取得済みと印刷されているが、この接着剤が味噌なのだろう。
見栄え、機能、生産効率が考えられているパッケージ。そして商品の魅力。100円(税抜)で売る・買ってもらうためにはしっかりとした理由がそこにあると改めて思った。
真空成形品を使ってみようよ!
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