第二十六回。真空成形型は【ピカピカ】・・がいつもよい訳じゃない。「エアだまり」はどんな現象?
ものによって、時と場合によって、良いと思われること=goodじゃないこともあるものです。
真空成形の現場においても、そう思うことが多々ありました。
例えば、成形金型が極めてピカピカであること。
もちろん場合によるのですが、平らな部分が広がるような形状でははそう思ったものです。
なぜならそのような形状、特に凸型の表面がピカピカ過ぎると「エアだまり」という見た目にgoodじゃない現象がおきてしまうことがあったからです。
今回は、「ピカピカ=Not Always」の話を少々
目次
「エアだまり」はどんな現象?
前述したとおり、 エアだまりという現象は 全ての状況においておきるものではありません。
平らな部分が広がるような部分、特に金型凸型の天面で起きやすい現象です。
成形時には型とプラスチック材と、もうひとつある。
真空成形が行われるその瞬間、成形材と型の他に存在するものがもうひとつあります。
加熱され柔らかくなった樹脂(プラスチック)を型に押し付け吸引します。そして型にへばりついて形成しているところを冷却し、もう戻らないようにするという成形方法です。
大気が取り残されている。
押し付けられたプラスチック材と成形型との間に挟まれて、取り残されたものがあります。
大気(空気)です。
エアだまりというのはこの残された空気のことですが、空気は勿論、ここから逃げようとします。
その逃げまとった軌跡が、成形に出てしまいます。
わたしはエアだまりの見栄えを、「掻いてしまったあとのジンマシン」とよく表現していました。
この表現からしても、あんまり感じの良いモノではないと思っていたことがわかります。
上の画像が、エアだまりです。
エアだまりは型の表面がピカピカだと起やすい。
例えば、忍者屋敷にいていきなり天井が落ちて来たとします。
4辺は壁、畳はしっかり敷き詰めらていて身を沈めるすき間さえない。
もう逃げられないと思いつつ、それでもジタバタしますよね。
取り残された空気も同じ思いだと思います。
金型の天面がピカピカに磨かれている状態は、忍者屋敷できれいに畳が敷き詰められている状態と同様と考えてください。
成形型の表面を粗す。
空気を逃がし、エアだまりというこの不快な現象を出来る限り抑えるにはどうすればよいのか?
空気の逃げ道をつくるという手が、まずあります。
もっとも簡単な方法は、紙やすりなどでエアだまりを起こしている型の表面を粗らしてあげることだと思います。
上のイメージ図のように、荒らしてできた細かい溝から側面に空気が逃げるようになります。
ときに、極細のドリルで穴をあけて真空時に吸引させるという手も使いました。
しかし、池に小石を投げ込んだときのような二重、三重の輪のような痕がつくことがあったりとわたしはあまり行いませんでした。
ただ注意しなくてはいけないことは、紙やすり等で型の表面を粗して空気を逃がす方法ではエアだまりは完全には取れません。
あくまでも、できる限り小さくする方向に持って行くという範囲にとどまるということです。
色物の材料ならば、サンドブラストで粗らすという手もあり。
使用する材料が透明ではなくて色の着いているものならば、サンドブラストを使って粗らすということもあります。
砂の番手を決め粗さをコントロールしながら、均一にきれいに粗らすことができます。
型の表面を粗らすこと=透明度を落とすこと。
先程、サンドブラストを使って型の表面を機械的に粗す条件に「使用する材料が色物ならば」と付けました。
なぜ、色の着いていない透明材料では行わないのでしょうか?
それは、型の表面を粗くすることで成形品の透明度が落ちてしまうからです。
サンドブラストを使うと、きれいに均一に間違いなく型を粗すことができます。
つまり、きれいに均一に間違いなく透明度を落とすとも言えます。
そのため、弊社ではサンドブラストを使うのは材料が色物である場合に限っていました。
「特に」製品を見せる目的がある成形品は、粗せない。
商品を特にきれいに・美味しく見せる必要がある成形品があります。
例えば、化粧品や食料品に使われる成形品がそうでしょう。
この種の成形品は、型はきれいに磨かれた状態で生産される場合が多いのではないでしょうか。
弊社工場内ではこれらの成形はほとんど行いませんでしたので、確かなことは言えませんが。
ただ、型屋さんの現場で鏡面し仕上げられている食品容器用の真空成形型を見たことがあります。
そうなると、エアだまり対策にはまた違った方法があるのでしょう。
粗す場合でも注意深く。
雑貨や玩具向けの成形品も、もちろん、きれいなものを生産することに努めます。
しかし弊社が社内生産を行っている時は、前述の特にの用途とは違った基準を持っていました。
エアだまりを小さくするために型を粗すことは、ごくごく普通に行っていました。
しかし、紙やすりで粗す場合には細心の注意を行いました。
人力による、紙やすりを使う場合でも粗す以上、型にキズをつけることになります。
成形品に光を当ててみて、キズが目立っていないだろうかを確認しながら行ったものです。
Not Always。
きれいな成形品を製作をするには、きれいに磨かれた成形型が必要です。
しかし、真空成形という加工方法ゆえにそれが全てではなくなる場合もあります。
今回は「エアだまり」という現象をひとつの例にあげてお話させて頂きました。
真空成形品を使ってみようよ!
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