第十二回。【逆テーパー】この外れない形状を利用して固定する。浮かんだイメージはジグソーパズル。

第十二回。【逆テーパー】この外れない形状を利用して固定する。浮かんだイメージはジグソーパズル。

前回のパッケージ紹介【Digio ² 】で、逆テーパーのことをちらっと触れました。
「傾斜を逆末広がりのようにすることで、製品が出てこないようにしている。」

今回の話をどう説明していこうかと考えた時に、ジグソーパズルが頭に浮かびました。
各辺に円状の凹凸があり、隣りのピース同士がかみ合って固定していくこのパズル。
円状の凹凸の根元がきゅっと内側に入り込んでいなければ、簡単に外れてしまう。

今日は、そんな逆テーパーの話を。

勾配とテーパー。

成形の現場でよく聞く「抜き勾配」と「テーパー」。
ともに傾き加減を表現する言葉ですが、意味することが違います。
とても間違いやすく、今回あらためて調べ直してみました。
結果、実はわたし自身も「傾斜」という意味合いでごっちゃに使っていたことが分りました。

勾配とは。

1.傾斜面の傾きの程度。または傾斜。「ゆるいーのついた屋根」「-を登る」
2.〘数〙傾斜の傾きの程度。垂直距離対水平距離の比で表す。→タンジェント
(weblio 【勾配】より)

勾配とは垂直線に対する傾き

勾配とは、滑り台の傾き加減だとわたしは思っています。
滑り台の一番上に立った時に「けっこう急だなぁ」と思ったりするときの、その急加減。

テーパーとは。

1.円錐状に先細りになっていること。また、その先細りの勾配。
(weblio 【テーパー】より)

水平線に対する開き

例えば、屋根を少し離れた場所から見ているとします。
全体として、てっぺん(棟)からどれだけ外側に屋根が開いて見えるか。
この画像の場合、片側10°、両側で20°開いているねとなります。
その20°が、わたしのテーパーイメージです。

切削工具で考えれば、勾配10°のものを使って削るとテーパー20°の製品が出来上がるということになります。

離型と傾斜

第六回の【離型剤その1】で、こんなことを書きました。

型の形状が外れやすいものならば、成形品はすんなり型から外れてくれることでしょう。
例えば富士山のような末広がりで、なだらかな傾斜で下がる形状ならば外れやすいと思います。
しかし残念ながら、そうありがたい形状ばかりではありません。

離型において、ありがたい形状とありがたくない形状。

成形型の傾斜によって離型性が決まる

型と成形品を外すという工程において、すんなり外れてくれるものはありがたい形状となります。
では、上記の図で、成形型(あ)と(い)では、どちらが外れやすいでしょうか?
外れやすいというか、(い)は通常の金型の動き(下に落ちる)では成形品は外せません。
つまり、(あ)が離型という工程においては、ありがたい形状となります。

逆勾配、逆テーパー。

ありがたいか、ありがたくないか。
その分岐点は、成形型の傾斜によるものだということがお分かりになられると思います。
片側(勾配)で見ても、両側(テーパー)で見ても、(い)のように内側に傾斜のかかっている形状は通常の金型の動きでは型が外れない形状となります。
その内側にむく傾斜を、逆勾配、逆テーパーと呼びます。

アンダーカット。

アンダーカットという言葉もよく聞きます。
逆勾配、逆テーパーは傾斜のことを指しました。
アンダーカットとは、「通常の金型の動き(下に落ちる)では成形型と成形品とが外れない形状、部分」のことを指すとわたしは思っています。
わたしの言い方だと、ありがたくない形状部分ということになるでしょうか。

型に穴があいていると成形品は外れない

アンダーカットは、傾斜だけに限りません。
例えば、
成形型に穴なんてと思うでしょう?
でも実際あるのです。
穴のあいてしまっている型で成形をすると、その穴から成形が入り込んでしまって型が外れなくなります。
ふつうは、成形前に気づきますが。

この外れない形状を利用して固定する。

先程の(あ)と(い)の図。
黒が成形型、青が成形品という想定でした。

例えば、黒も成形品だったら。
本体に被せるようにふたが閉じて、開かないようにできます。
この仕様を使っているのが、シェル(貝)パッケージです。

例えば、黒が中に入れる商品だったら。
パッケージ内での商品の動きを抑えることができますね。
先日【パッケージ紹介】で取り上げた「Digio ²」のパッケージがそうでした。

逆テーパー部分の成形品

製品の凹部分にアンダーカットが入るような形で、パッケージ内での固定を助けています。

外れない形状をどうやって外すのか?

外れない、外れないと言ってきましたが、それでも製品は世に出ています。
つまり、工夫をして外しています。
ここでは、代表的な方法を一つあげておきます。

型のテフロン加工
型の表面の摩擦係数を下げることにより、成形品が型から外れやすくします。

ジグソーパズルのイメージ。

冒頭、
「各辺に円状の凹凸があり、隣りのピース同士がかみ合って固定していくこのパズル。円状の凹凸の根元がきゅっと内側に入り込んでいなければ、簡単に外れてしまう。」
と書きました。
無理無理でしたが、逆勾配、逆テーパーのイメージをつかんで頂ければ幸いです。

次回はまた実物紹介をしたいと思っています。

真空成形品を使ってみようよ!

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