第七回。【離型剤その2】シリコーンむらは、成形屋泣かせ。

第七回。【離型剤その2】シリコーンむらは、成形屋泣かせ。

「成形品と型とがはずれにくい形状がある」・「本来元プラスチック材はくっつきやすいものである」、そのため真空成形においては離型剤を使用してはがれやすく・くっつきにくくするという話を前回しました。

このような不良率を下げ、作業効率を上げる離型剤(=シリコーン)は良いことだらけで万事OKかと言えばそうとも言えません。
今日はその効力がゆえのウィークポイント、成形工程上の難しさをお話します。

シリコーンの上には、塗料・インキが乗らない。

まずは、シリコーンと着色の問題。
シリコーンは表面張力が弱くモノと密着する力が弱いと前回(1)で話しました。
そのため、一般的な塗料やインキも密着しづらいのでしょう。
昨今はシリコーンゴムにも印刷ができる技術も出てきていますが、それは特別。
一般的には、シリコーン塗布面には塗料・インキは乗らないと考えてよいと私は考えています。

ロール材を使って成形した後に、着色する場合に問題があり。

平板では問題ない。

実は材料商社が規格として持つような、ごくごく一般的な平板材には私が知る限りシリコン―ンは塗布されていません。
平板材は箱やクリアケースなどなど、成形以外にも多様な使われます。
印刷がされることは大前提でしょう。
印刷適性や静電気抑制、スリップ性などを考慮しつつシリコーンの代替素材が塗布されています。
では、シリコーンと着色の問題はどんな場面で?

ロール材を使用する時に要注意!

それは、ロール材で成形した後に着色をするような製品の場合です。
例えば、お面。
ロール材を使って速く大量に成形品を作り、そのあとで吹付塗装で着色をします。
規格の成形用ロール材はシリコーンが塗布されているものと考え、成形をする側が着色の可否をよくよく注意して材料選びをしないと生産事故が起こります。

シリコーンなしの選択肢がなくなったのが痛い。

以前は、シリコーンが付いている・付いていないの選択ができた。

以前はシリコーンの有り無しを選択でき、1巻から買える成形用ロール材が塩ビ(塩化ビニル)にあったのでよく使いました。

PETなどは材料どうしの密着性が強く「シリコーンなし」というのは考えられませんが、塩ビには選択ができるものがあったのです。
その塩ビも市場を他の素材に奪われて生産自体が縮小され、そのあおりでシリコーンなしタイプの規格品は消えてしまいました。
現状では生産数量をまとめ、特注品として【シリコーンなし】の材料を購入しなくてはいけなくなりました。

包材用成形現場では、有無より不均一が問題。

ただ、一般的な包材用成形品を生産する現場にとっては、有り無しには関心は薄いでしょうね。
シリコーンなしの規格ロール材が買えなくなって痛いなんて言っているのは、「成形+着色」品を制作しているうちのような会社くらいなもの。
シリコーンが成形現場を強く悩ませるのは、有り無しではなく均等か不均等かによってでしょう。

シリコーンむらは、成形屋泣かせ。

斑(まだら)と書いて、ムラとも読むのですね。
知りませんでした。
ムラとはこんな意味合いです。

・物事(の仕上がり)がそろっていないこと。均一の状態になっていないこと。
・安定していないこと。ある状態に落ち着いていないこと。
(明鏡国語辞典より引用)

シリコーンむらは油がついてしまったかのように見えてしまう。

プラ材に塗布されたシリコンにも、このムラが生じます。
このシリコーンむらが、成形現場を泣かせます。
前回の強い味方から一変です。

シリコーンむらのイメージ

机の上に水をたらしその上をラップで覆って、シリコーンむらのイメージを作ってみました。

ブリスターなどを大量生産する場合、おおよそ「連続機+ロール材」の組合せになります。
材料の状態では、程度の差はあっても塗布面がこんな感じに見えるところが多々あります。
強く巻かれていますので、シリコーンが多く残っている部分は画像のように液体がつぶされたように見えます。
もちろん、まったく気にならないきれいな状態のもののそれ以上にあるのですが。

成形後にどこかで油がついてしまったかのように見えてしまう。

ロール材は両端をチェーンでくわえられ、機械の中に引っ張り込まれて成形されます。
巻がとかれて圧が弱くなりますから、シリコーンむらも画像よりは見えづらくなります。
ただ、消えたわけではないので、光の加減や見る角度によってはやはり見えます。

私たち成形に携わっている人間は、これを見ればシリコーンむらと分かります。
しかしそうでない方々の中には、これは何だろうと思われる方がいらっしゃるかもしれません。
ムラが大きい場合は、‵どこかで油が付着しちゃったんじゃない?'と思われるかもしれません。

使いみちによってはあらかじめご説明します。

材料メーカーも、このムラにはかなり気をつけています。
希釈、塗布、乾燥と各メーカーで知恵を絞っています。
しかし、完全になくすことは難しいようです。

どのような製品向けに使用されるのかによっても考え方は変わりますが、お話しておいた方が良いと判断した時に私はこのムラに関してあらかじめご説明するようにしています。
特に、成形品を初めてお作りになられるようなお客様には。

シリコンむらの基準はメーカーが決めている。

シリコーンむらを完全になくすことは難しいと現時点では私も考えています。
ただ、残念に思うことがあります。
その許容範囲はメーカーが決め、メーカーごとに許容度が違ってくるということです。
シリコーンむらの問題が起きるたびに、メーカーとぶつかり合いです。
「ムラなく」ということが難しいと分かっていても、言わずにはいられないのです。

それでも、離型剤は 成形工程の良き相棒 。

今回は、離型剤(=シリコーン)が塗布されている材料を使用する際の注意すべきところを書きました。
個人的には痛い目にも会っているシリコーン。
しかし、成形加工にはなくてはならない良き相棒でもあることには間違いありません。
シリコーンを思うがままに塗布できる、技術力のあるメーカーが出て来ることを望むばかりです。

※シリコーンを材料に付着させることを一貫して‵塗布'と書いてきましたが、実際にはシリコンの付いているロールの間を材料を通らせて付着させます。

そろそろ、実物を例に上げて成形品のお話ができればと考えています。

世間に出回る成形品を例に上げてお話をすることを考えています。
その方がご覧頂いている皆様にもピーンと来ていただけることでしょう。